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かみサマをうんだひとびと

神サマを生んだ人々

坂口 安吾

「キング 第二九巻第一一号」1953(昭和28)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,108 字 · 27 页

青空文庫

「そこにいる婆さんは、例の旅館にいた婆さんじゃないか」

「そうですよ。あのヤリテ婆アのような奴ですよ。そして、その隣にいるのが、ボクの本当の女房ですよ」

安福軒は落着き払って、そう答えた。おとなしそうな年増が七ツぐらいの子供をつれて坐ってる。子供にも合掌させ、エイヤッ、エイヤッをやらせているのである。

「あのコブつきが君の奥さんかい?」

「そうですよ。なんしろわが家はこの宗教で暮しを立てていますから、女は正直なものですよ。バカなんですな。ヒマがありすぎるんですよ。ボクを信仰してさえいりゃ間に合うのにね」

「帰ろう。帰ろう」

川野が二人をうながした。

大巻博士は川野と安福軒のフシギな対照をハッキリ認めないわけにいかなかった。川野は落着きがないのに、安福軒は糞落着きに落着き払っている。

安福軒が二人に話しかけないのは、宗教について談ずることに興味をもたないせいだ、ということがハッキリ読みとれるようであった。

二人の俗物どもがまだ宗教のフンイキからぬけきれずに、そしてまだほかのことが落着いて考えられないような状態の中にいる。その最中は二人に話しかけてもムダだと断定しきっている落着きである。