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かみだな

神棚

豊島 与志雄

「新潮」1923(大正12)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,427 字 · 44 页

青空文庫

それからつかつかと上り込んでいった。

第一に俺の眼についたのは、神棚の明々とした蝋燭の火だった。一寸不快になった所へ、お久が顔色を変えて俺の方を見上げた。

「どうしたんだよ、お前さん、頭から血が流れてるー。」

「えッ!」

頭に手をやってみると、左の耳の上の方が円く脹れ上って、ねっとりと血がにじんでいた。あれだな……と思うと同時に、ひどく頭が痛んできた。俺は何とも云わずに、そのまま台所へ行って、血を洗って頭を冷した。いい気持だった。

暫くして俺はまた戻ってきたが、その間お久は、火鉢の側で石のように固くなっていた。そして俺の姿を見ると、いきなり罵り立てた。

「やっぱりそうだったんだ! 私お前さんをそんな人だとは思わなかった。自分でよくも恥しくないんだね。浅間しくないんだね!……私もうお前さんから鐚一文だって貰やしない。ええ貰うもんか、飢え死にしたって貰やしない。さぞたんとお金を持ってきたんだろうね。そんなものなんか溝の中へでも棄っちまいなよ。恥知らずにも程がある!……。」

俺は呆気にとられた。

「何を云っ……。」しまいまで云いきれなかった。

「いくら白ばくれたって、私にはちゃんと分ってるよ。