轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かぐらざか
神楽坂
矢田 津世子
「人民文庫」1936(昭和11)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,611 字 · 40 页
爺さんがいつまでものんべんだらりとしていて話をはこぼうとはしないので、お初は階下で気をもんでいるおっ母さんの姿に急かれるような気がしていらいらしてくる。そのくせ、爺さんの顔をみていると妙に言い出せない。こんな日がくりかえされて、おっ母さんの気嫌が悪くなる。
「何んて口下手な娘だろう」
と、愛想をつかして「その内、爺さんがどっかから内儀さんに向きなのを探してくるこったろうよ」
などと厭味を云うのである。
「そんなにお爺ちゃんのことが気になるならおっ母さんがお内儀さんになればいいじゃないの」
こう云ってお初は耳根を真っ赤にして、袂を絞りながら二階へ駆け上っていく。
「まあ、何んてことをいうの。この娘は……」
おっ母さんは銅壺の廻りを拭き止めて、呆れたように梯子段を見あげている。やがく俯向いて銅壺のあたりをゆるゆると拭いていたが、人差指に巻きつけていた浅黄の茶布巾を猫板の上へおいて、襦袢の袖口をひき出して徐かに眼を拭いた。
お初ひとりを楽しみにこれまで苦労をしのんできたおっ母さんには、これからの好い目」が当然のことのように思われているのに、お初は一向にこの心を汲まずおっ母さんの仕合せなぞどうでもいい、と思うている。