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しんぴこんちゅうかん

神秘昆虫館

国枝 史郎

在线阅读国枝 史郎《神秘昆虫館(しんぴこんちゅうかん)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,803 字 · 213 页

青空文庫

駕籠の一団はひた走る。

砂山がある。砂山を越す。流木がある。流木を飛ぶ。とまた砂山が出来ている。それを越さなければならなかった。

「可笑しいねえ。どうしたんだろう? 何んとも云えない不安の気が、海の方から襲って来るよ」

北王子妙子の声がした。

「走るのをお止め! 駕籠をお止め!」

――止まった駕籠からスルスルと、北王子妙子は現われたが、浪打ち際まで歩いて行き、ズーッと海上を眺めやった。

が、海上には何んにもない。月光に暈かされて茫漾と、煙りこめているばかりである。

だが北王子妙子には、どうやら何かが見えるらしい。いつまでも不安そうに眺めている。

と、にわかに振り返ったが、

「柵頼柵頼!」と声を掛けた。

「は」寄って来た武士がある。柵頼格之進という武士である。慇懃に小腰をかがめたが、「は、何事でございますか?」

「ご覧、海上を、船が来るだろう?」

柵頼格之進は海上を見たが、船の姿などは見えなかった。

「いえ、見えませんでございます」

「そうかい」と云ったが妙子の声は、依然不安を帯びていた。「お前達のような凡眼には、時刻は深夜、間隔は遠し、なるほどねえ、見えないかも知れない、が、確かに恐ろしい船が、一隻帆走って来るのだよ」