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しんけい

神経

織田 作之助

「文明 春季号」1946(昭和21)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,754 字 · 28 页

青空文庫

素人にきまってらア」

「きまってるって、ははあん、こいつ、一糸もまとわさなかった覚えがあるんだな。太え野郎だ」

そんなみだらな話を聴いていると、ふと私は殺された娘のことが想い出された。楽屋裏の溝の中で死んでいたのは、レヴュ好きの彼女には本望であったかも知れないなどとは、いい加減な臆測だ。犯されたままの恥しい姿で横たわっているのは、殺されるよりも辛いことであったに違いない……。

「花屋」を出ると、私は手拭を肩に掛けたまま千日前の通りをブラブラ歩いて、常盤座の前の「千日堂」で煙草を買った。

「千日堂」は煙草も売っているが、飴屋であった。間口のだだっ広いその店の屋根には「何でも五割安」という看板が掛っていて、「五割安」という名前の方が通っていた。夏は冷やし飴も売り、冬は※(「飮のへん+稻のつくり」、第4水準2-92-68)巻きを焼いて売っていたが、飴がこの店の名物になっていて、早朝から夜更くまで売れたので、店の戸を閉める暇がなく、千日前で徹夜をしているたった一軒の店であった。

「千日堂」でも殺された娘の噂をしていた。

「毎日飴買いに来てました。いや、きっとあの娘はんに違いおまへん」