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しんけい
神経
織田 作之助
「文明 春季号」1946(昭和21)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,754 字 · 28 页
買って来た飴をしゃぶりながら、安宿の煎餅蒲団にくるまって、レヴュのプログラムを眺めていたのかと、私は不憫に思った。
その「五割安」の飴は、私も子供の頃買ったことがある。その頃千日前で尾上松之助の活動写真を上映しているのは、「千日堂」の向いの常盤座であった。上町に住んでいた私は、常盤座の番組の変り目の日が来ると、そわそわと源聖寺坂を降りて、西横堀川に架った末広橋を渡り、黒門市場を抜けて千日前へかけつけると、まず「千日堂」で二銭の紫蘇入りの飴を買うてから常盤座へはいるのだった。その飴はなめていると、ふっと紫蘇の香が漂うて、遠い郷愁のようだった。
紫蘇入りの飴には想出がある。京都の高等学校へはいった年のある秋の夜、私ははじめて宮川町の廓で一夜を明かした。十二時過ぎから行くと三円五十銭で泊れると聴いたので、夜更けの京極や四条通をうろうろして時間を過し、十二時になってから南座の横の川添いの暗い横丁へ折れて行った。暗い道を一丁行き、左へ五六間折れると、もうそこは宮川町の路地で、赤いハンドバッグをかかえた妓がペタペタと無気力な草履の音を立てて青楼の中へはいって行くのを見た途端、私はよほど引き返そうと思ったが、もうその時には私の黒マントの端が、