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まつりのよる

祭りの夜

豊島 与志雄

「日本小説」1948(昭和23)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,781 字 · 20 页

青空文庫

長火鉢にはお燗の湯が沸いており、食卓には魚類を主にした料理の皿が幾つか並んでいた。

「今日は、つまらないことになったの。東京から、友だちが二人、お祭りを見に来ることになってたのに、急に来られなくなったと、電報なんかよこすでしょう。待ちぼうけさせられちゃった。」

「僕がその代理の役ですか。」

「不服なの。二人とも相当にいけるたちだから、たくさんあがってもいいわ。あら、もういくらかはいってるんでしょう。」

私は炬燵にはいって、杯を受けた。遠慮はもうなかったのだ。姉というか、若い叔母というか、それに近い気持になじんでいたのである。

「一人で、お詣りしてきたわ。これ、ごらんなさい。ためしに、おみくじをひいてみたら、大吉なのよ。」

帯の間から彼女は紙片を取り出した。大吉の説明のむずかしい文句と文字から、私がふと眼を挙げると、庭の夕闇を眺めていたらしい彼女の視線が、僅かばかり揺らぎ動いて、私の方へ向いてきた。その眼に、深い陰がいつもより一層深々と宿っている。私は、自分の方が虚を衝かれた思いで、黙って紙片を彼女に返した。

「お留さんて、まけない気で、わたしも大吉を引いてくると、出かけていったんですが、何があたるかしら。