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こうせんぜんじのことども

禅堂生活

鈴木 大拙

鈴木大拙『禅堂生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:洪川禅師のことども、釈宗演師を語る、僧堂教育論、楞迦窟老大師の一年忌に当りて、鹿山庵居。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,634 字 · 57 页

青空文庫

石燈には老師の自作を毒狼窟の筆で刻み込まれてある。その歌はこうである。

わが身をば何にたとへん白雲の山ある里は家路なりけり

「不可往道人」としてあるのは「楞伽」即ち「ランカー」の義訳である。去年密葬の日は夕方からしょぼしょぼと降って、うら寒い天気であった。今日は晴れわたると云うほどではないが、気候は寧ろ暖かい。(今日も二時半頃から降り出した。)墓の上の方の楓はまだ紅葉しない、石段の上にある銀杏の樹数本は亭亭として聳えて居る。これから益※(二の字点、1-2-22)黄ばんでくると、此処ら一面は落葉で埋まるであろう。お墓はまだ新しいので、何となく落付きがない。併しこれから二年、三年、五年、十年とたつと、生垣も茂り、石段も苔蒸して、お墓らしくなるであろう。何だか有り難いような又有り難くもないような気がせぬでもない。

書斎に行って見れば、仙崖の画も、隠元の書も、旧の通りであるが、床の間には老師の油画の懸物に線香を上げてある。在りし人の面影のみはいくらか留めて居る、併しその人は見えぬ。「何れの処にか在る」と一場の問答でもすべき処である。ただ向うの山は旧に依りて茅で蔽われて居る。