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ふくざわゆきち

福沢諭吉

高山 毅

ペンは剣よりも強し

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,555 字 · 109 页

青空文庫

「お母上さまのご病気というのは、うそです。じつは、こういうわけがあって……。」

と、その手紙には、つぎのようなことがかかれていました。

それは、奥平壱岐のしくんだひきょうなはかりごとだったのです。諭吉が長崎へきたとき、壱岐はおなじ中津のものだというので、めんどうもみてくれたし、なつかしがりもしました。けれども、自分よりも身分のひくい諭吉が、勉強がどんどんすすんでいき、ひょうばんのよくなっていくのをみて、これでは、自分のねうちがさがってしまうとおもいこみました。

なんとかして、諭吉を長崎からおいだしてしまおうとかんがえて、そのことを中津の父親にしらせてやったのでした。父親というのは家老ですが、自分のむすこにたいしてはとてもあまい親ばかでしたから、諭吉のいとこ藤本元岱をよびつけて、

「諭吉が長崎にいては、せがれ壱岐の出世のじゃまになるから、中津へよびもどしてくれ。ただし、そのりゆうには、母が病気だといってやれ。」

と、きびしいめいれいです。家老じきじきのめいれいですから、ことわるわけにいきません。

「かしこまりました。」

とこたえて、諭吉のお母さんにも話をして、そうだんのけっか、おもてむきは、家老のめいれいどおりの手紙をかいて、もう一通には、このいきさつをかいて、