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わたくしたちのけんせつ
私たちの建設
宮本 百合子
「私たちの建設」実業之日本社、1946(昭和21)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,430 字 · 107 页
その秀吉の愛情を独占するということは、とりも直さず女性としては一つの復讐であった。淀君は殆んど分別なく我意を揮った。豊臣家の存亡ということについて、責任を負う気持がなかったのも当然である。
悲劇と喜劇とが錯綜して、日夜運行していた大坂城の中にお菊という一人の老女があった。余程永年、豊臣家に仕えていたものらしい。ところが、このお菊がどんな生活をしていたかといえば、冬でも僅かに麻衣を重ねていたに過ぎないということが、竹越与三郎氏の日本経済史の中に一つの插話として書かれている。そうして見れば、当時最も華美とされた城の中でさえも、女主人公と使われる女達との間には、着るものから食べるもの、あらゆることに恐ろしい懸隔があったことが分る。
徳川時代に入って封建制は確められ、士農工商の身分的区別も確立した。徳川氏の権力維持の努力とそれを繞る野心ある諸家の闘いは、やはり女性をさまざまの形でその仲介物とした。稗史の中でも徳川の大奥というものは伏魔殿とされた。沢山の隠れた罪悪と御殿女中の不自然な生活から来る破廉恥な行為とは、画家英一蝶に一枚の諷刺画を描かせ、彼はそのために遠島の刑にあった。