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わたくしたちのけんせつ
私たちの建設
宮本 百合子
「私たちの建設」実業之日本社、1946(昭和21)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,430 字 · 107 页
次の実話は決して例外唯一の場合でなかった。
或る大規模の軍需工場で、八月十五日即日傭員の解雇をした。平均五、六百円の金を貰ったところが、当時俄かの復員と輸送網の破壊されている状態から遠い地方から来ている娘達、遠い地方から徴用されて来ていた青年達は帰るに家はなし、汽車は利かない。況して海を隔てた土地から来ている人は乗って帰る船さえもなかった。工場側ではその事情に従って、十一月まではそれ迄のように寮で暮してよいという話合いをつけた。たいへん親切そうな待遇ぶりであった。しかしいざその生活が始まって見ると、様々な問題が起った。第一食事はその若い人々が、自弁で、外食券で、食べなければならない。外食券の食事が、どんな実質のものかということは、誰しも知っている。胃嚢は、つまるところ闇の食物で満たして行かなければならなかった。五、六百円の金が一皿五円のおでんを食べて、一山十円の蜜柑を食べて、何ヵ月もつというのだろう。男達は自然に博奕を始めた。女子従業員にしても、食物の事情に変りはない。これまでの過度の労働から俄かに働かない生活がはじまり気分は散漫荒廃して、正しい健康な慰安のない街々を歩きまわった。