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わたくしたちのけんせつ
私たちの建設
宮本 百合子
「私たちの建設」実業之日本社、1946(昭和21)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,430 字 · 107 页
これが、事実であった証拠に、政府は、周章して、五円札も封鎖されることを公表したのである。
それぞれの新聞が、モラトリアム家計の設計をのせた。同じように次の式をのせた。
手持現金旧券+(新円100円×家族人数)+500円以内の給料+300円+(100×X)
旧券は、それがどれほどどっさり在ろうとも貯金して、(封鎖されて)手持現金としては、家庭の人数当に一人百円ずつ新円にかえられる。それに、主人が五百円までの月給をとって来て、不足のときはその主人(世帯主)が、三百円までの貯金をひき出せる。それに、家庭の頭かずだけ一人宛百円ずつ引き出せる。其故六人家族ならば千二百円の生計が出来て、これ迄よりよいという風な解説が、どの新聞にも出されたのであった。
式は余り明瞭に、まるですべての人の生計がそっくりその通りであるかのように示されたので、私たちは何となしそれを自分たちの実際だと勘ちがいしそうであった。しかし、落付いて考えてみると、この式は、何と魔術の式だろう。
第一、いつの間に日本じゅうの給料が、五百円平均と定ったのだろう。私たちは、つい先頃、政府が男子三十歳――五十歳、最低賃銀四百五十円、女子百五十円と発表したことを覚えている。