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わたしのあったゴーリキイ
私の会ったゴーリキイ
宮本 百合子
「文学案内」1936(昭和11)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,457 字 · 11 页
今日のような時代に生きるわれわれにとってゴーリキイの歩んだこの道は無限の含蓄をもっている。ゴーリキイが若い労働者の文学志望者に与える言葉の中に「私はロマンティシズムを支持する、しかし、ロマンティシズムに対して極めて本質的な条件つきのもとに」という意味のことをいっているのは以上の消息を語るものであると思う。
また、なぜ彼が小説をかくようになったかという問いに対してこう答えている。
「困難な生活は多くの印象を私に与えた。私はそれを語らずにはいられなかったのだ」と。
彼は自分のところへ作家志願の希望をのべて寄越した二つの手紙をわれわれに比べてみせ、それを批判している。一人の労働者はこういう意味をかいた。
「ああ、実に私の生活はくさくさします、せめて小説でも書かねばいられません、私は作家になりたいのです」
ところで、もう一人の労働者からの手紙は以下のようなものであった。
「親愛なゴーリキイ、私は自分の過去において経験したさまざまの闘争、その間に得た印象について小説をかきたいという心持ちを制することが出来ません」
ゴーリキイがこの二つの作家志望の動機のどちらを、健康なものとみとめているかということは、説明を要しないであろう。