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わたしのぶんがく
私の文学
織田 作之助
「夕刊新大阪」1946(昭和21)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,405 字 · 5 页
その一点をさけて、線を引くことが出来なくなる。私は私の任意の一点を模倣していたのだ。
私は非常な人生浪費者だ。私の浪費癖は、もういまではゴシップになっているが、しかし私の浪費はただ物質だけでなく、私の人生、私の生命まで浪費している。この浪費の上に私の文学が成り立っている――というこの事情も、はじめは私の任意の一点であったのだが、いまではもはや私の宿命点みたいになってしまった。私はモトの掛った小説などはじめは軽蔑していたのだが、今では小説を書くのに、自分の人生や生命を浪費しているのではないかとさえ、思うくらいだ。すくなくとも私は小説を書くために、自分をメチャクチャにしてしまった。これは私の本意ではなかった。しかし、かえりみれば、私という人間の感受性は、小説を書くためにのみ存在しているのだと今はむしろ宿命的なものさえ考えている。
こうした考え方は、誇張であろう。しかし、誇張でないいかなる文学があろうか。最近よんだ作品の中で、最も誇張でない秋声の「縮図」にさえ、私はある種の誇張を感じている。
私は目下、孤独であり、放浪的である。しかし、これも私の本意ではなかった。