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わたしのご

私の碁

坂口 安吾

「囲碁春秋 第二巻第一二号」1948(昭和23)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 953 字 · 2 页

青空文庫

廻り派ばかり、そういう人々と三年間立廻りに耽っていたから、僕はもう布石も序盤もない。人の石を殺しに行くことしか知らない行儀の悪い碁になってしまった。むかしは、もうチョット、上品であった。

僕はこの春、文人囲碁で一日碁を打ったことがあるほかにはこのまる一年半、ゆっくりした気持ちで石を握ったことはないのである。

尤もこの春ひどく疲れて豊島与志雄さんを訪ねて十番碁をやり常先に打ちこまれ、国府津で泥酔して尾崎一雄とやって互先に打ちこまれ、勝ったのは村松梢風さんにだけ。全然意気があがらなくなってしまった。

むかしは碁の素性もいくらか良かったけれども、腕ッ節もたしかにもっと強かった筈で、ちかごろの弱腕、まことに残念千万である。時々、頭を休める一二時間に碁石を握れるような環境があるといいが、ともかく、ボツボツ暇々に練習をつんで、もうチョット恥をかかずにすむような碁力を養いたいと思っている。