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あきげ

秋毛

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,954 字 · 4 页

青空文庫

毎朝の抜毛と、海と同じ様な碧色の黒みがかった様な色をした白眼の中にポッカリと瞳のただよって居る私の眼は、見るのが辛い様な気がする。

白眼が素直な白い色をして居ない者は「□持」だと云うけれ共私もたしかにそうなのかもしれない。

時々、此の青っぽい白眼も奇麗に見える事があるけれ共、此頃の様なまとまらない様子をして居ると、眼ばっかりが生きて居る様な――何だか先ぐ物にでも飛び掛りそうに見える。

弟が「どら猫」の眼の様だと笑った。

ほんとうに此頃は「どら猫」の生活をして居る。

眠りたいだけ眠り、気の向いた時食べ、そして何をするでもなくノソノソ家中歩き廻って居る。

それでもまあ、少しばかり読んだり書いたりする位が人間らしい。

何か読むか書くかしなければ居られない私がその仕事を取りあげられて仕舞うと「どら猫」より馬鹿になって仕舞う。

ボンヤリと空をながめて居たり、うなだれて眼ばかり上眼を用って物をねらう様な様子をしたりする。

変に陰気になってろくに笑いもしなくなる。

呑助が酒を取り上げられたのと同じになるのをつい此間から草花でまぎらす事を気がついた。

五六本ある西洋葵の世話だのコスモスとダーリアの花を数えたりして居る。