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あきふかき

秋深き

織田 作之助

「大阪文学」1942(昭和17)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,176 字 · 27 页

青空文庫

男の方がずっと小柄で、ずっと若く見え、湯殿のときとちがって黒縁のロイド眼鏡を掛けているため、一層こぢんまりした感じが出ていた。顔の造作も貧弱だったが、唇だけが不自然に大きかった。これは女も同じだった。女の唇はおまけに著しく歪んでいた。それに、女の斜眼は面と向ってみると、相当ひどく、相手の眼を見ながら、物を言う癖のある私は、間誤つかざるを得なかった。

暫らく取りとめない雑談をした末、私は機を求めて、雨戸のことを申し出た。だしぬけの、奇妙な申し出だった故、二人は、いえ、構いません、どうぞおあけになって下さいと言ったものの、変な顔をした。もう病気のことを隠すわけにはいかなかった。

「……実は病気をしておりますので。空気の流通をよくしなければいけないんです」

すると、女の顔に思いがけぬ生気がうかんだ。

「やっぱり御病気でしたの。そやないかと思てましたわ。――ここですか」

女は自身の胸を突いた。なぜだか、いそいそと嬉しそうであった。

「ええ」

「とても痩せてはりますもの。それに、肩のとこなんか、やるせないくらい、ほっそりしてなさるもの。さっきお湯で見たとき、すぐ胸がお悪いねんやなあと思いましたわ」