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あきふかき
秋深き
織田 作之助
「大阪文学」1942(昭和17)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,176 字 · 27 页
そんなに仔細に観察されていたのかと、私は腋の下が冷たくなった。
女は暫らく私を見凝めるともなく、想いにふけるともなく捕えがたい視線をじっと釘づけにしていたが、やがていきなり歪んだ唇を痙攣させたかと思うと、
「私の従兄弟が丁度お宅みたいなからだ恰好でしたけど、やっぱり肺でしたの」
膝を撫でながらいった。途端に、どういうものか男の顔に動揺の色が走った。そして、ひきつるような苦痛の皺があとに残ったので、びっくりして男の顔を見ていると、男はきっとした眼で私をにらみつけた。
しかし、彼はすぐもとの、鈍重な、人の善さそうな顔になり、
「肺やったら、石油を飲みなはれ。石油を……」
意外なことを言いだした。
「えッ?」
と、訊きかえすと、
「あんた、知りはれしまへんのんか。肺病に石油がよう効くということは、今日び誰でも知ってることでんがな」
「初耳ですね」
「さよか。それやったら、よけい教え甲斐がおますわ」
肺病を苦にして自殺をしようと思い、石油を飲んだところ、かえって病気が癒った、というような実話を例に出して、男はくどくどと石油の卓効に就いて喋った。
「そんな話迷信やわ」