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あきくさのみ
秋草の顆
佐左木 俊郎
「今日の文学」1931(昭和6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,856 字 · 8 页
妻が特別おしゃべりな女だからではない。新婚当時の私は、妻から言葉をかけられると、顔を赤くして、吃りどもりそれに答えるような人間であったからだ。
併し、まもなく妻が私の性格に慣れたことはもちろんである。妻はけれども、私達一族のこの性格には、その後もしばしば驚かされるのであった。甚だしいのは田舎の伯父である。自分の伜が田舎の中学を卒業して東京の私立大学へ這入ることになったので、私の家に伜を預けたというわけなのだが、伜を連れて来て、別に「置いてもらえるか?」とか「頼む」とも言わずに、何か口の中で「日比谷公園と四十七士の墓とは見て行ったらいいだろうかな?」というようなことをぼそぼそと言っただけで帰って行った。もっともその前に、私の父から、書生代わりにもなるだろうから従弟の峻を置いてやってはどうかという手紙があったので、私達は歓迎して置いてやる意味の手紙を伯父へ書いたのではあったが、それにしても、ただ頭をさげるだけで一言も挨拶の言葉を口にしない伯父の態度を、妻はひどく驚いたらしかった。田舎から持って来た土産物なども、唸りでもするかのように、「これ」とか「ほら」