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しゅうふうふき
秋風不帰
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1939(昭和14)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,593 字 · 28 页
なにかあったのだ、留守中になにか事件があったのだ、そう気付いた。
また一人、うしろ右手から、
「えいッ、とう!」
絶叫と共に突を入れる刹那、
「かあっ」
と、真正面から上段へ叩きつけて来た。
丁度挾殺のかたちになった、しかしその瞬間の隙を截って夏雄の体が躍動し、戛! という響と共に一本の剣は空へ叩きあげられ、正面から踏み出した一人は烈しくのめって行って、町家の障子ごと家の中へ顛倒した。
脈数にして二つ。
夏雄の両足は元の土を踏んで寸分も動かず、木剣は青眼、鼻梁の上にぴたりと静止していた。
「手強いぞ、油断するな!」
「脇を詰めろ」
「待て、逸まるな、助勢が来る」
短い叫びだが、夏雄の耳には、一語々々針のように突刺さった。
――事情が分るまでは、一人も斬りたくない。
そう思ってはいるが、必死を期しているらしい人数に、若しこのうえ助勢が来たらこのままでは済まなくなる。
――切り抜けるなら今のうちだ。
覚悟を決めたとき、凄まじい蹄の音がして、町外れの方から一頭の放れ馬が狂気のように疾駆して来た。正に天の祐けである。
「危い、馬だ!」
「馬だ」
呼び交わして刃襖の一方が割れる。