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かがくじょうのこっとうしゅみとおんこちしん

科学上の骨董趣味と温故知新

寺田 寅彦

「理学界 第十六巻第七号」1919(大正8)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,108 字 · 7 页

青空文庫

骨董趣味とは主として古美術品の翫賞に関して現われる一種の不純な趣味であって、純粋な芸術的の趣味とは自ずから区別さるべきものである。古画や器物などに「時」の手が加わって一種の「味」が生じる。あるいは時代の匂というようなものが生じる。またその品物の製作者やその時代に関する歴史的聯想も加わる。あるいは昔の所蔵者が有名な人であった場合にはその人に関する聯想が骨董的の価値を高める事もある。あるいはまた単にその物が古いために現今稀有である、類品が少ないという考えに伴う愛着の念が主要な点になる事もある。この趣味に附帯して生ずる不純な趣味としては、かような珍品をどこからか掘出して来て人に誇るという傾向も見受けられる。この点において骨董趣味はまたいわゆる蒐集趣味と共有な点がある。マッチの貼紙や切手を集めあるいはボタンを集め、達磨を集め、甚だしきは蜜柑の皮を蒐集するがごとき、これらは必ずしも時代の新旧とは関係はないが、珍しいものを集めて自ら楽しみ人に誇るという点はやはり骨董趣味と共通である。

科学者の修得し研究する知識はその本質上別にそれが新しく発見されたか旧くから知られているかによって価値を定むべきものではない。