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かがくほうほうろん

科学方法論

戸坂 潤

「科学方法論」岩波書店、1929(昭和4)年6月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,035 字 · 284 页

青空文庫

計量幾何学に於ける座標は云うまでもなく計量の座標であった。処が之が経験科学に用いられる時、座標はもはや計量の座標としては理解し尽されないであろう、それは次のような理由からである。経験科学に於て最も精密なる――それはカントの言葉によれば eigentlich である――ものは力学である。ヘルツの真の力学(eigentliche Mechanik)を、経験科学に於ける最も精密なる部分の古典的表現として択んで見よう。ヘルツによれば真の力学は、時間と質量とが空間に結合した場合の力学を意味する、それはカントの意味に於て、先天的ではなくして経験的でなければならないという。処が、空間と時間との結合として定義された運動学、又空間と質量との結合として定義された静力学、この両者はヘルツによれば、カントの意味に於て、先天的であるというのであるから、空間・時間・質量は何れも先天的でなければならない筈である。そうすると、この先天的な三つの概念の結合であった真の力学が先天的ではなくして経験的であるためには、何か三者の結合の際に経験的なものが外から這入って来なければならない筈である。