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かがくほうほうろん

科学方法論

戸坂 潤

「科学方法論」岩波書店、1929(昭和4)年6月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,035 字 · 284 页

青空文庫

その意味に於て之は到底第一の場合の常識概念ではない。物理学の内容にまで構成されて初めて、自然とも物理現象とも名づけられることが出来、又その名が何を指し示すかを吾々が実質に於て覚ることが出来るような、そのようなものが物理学の対象なのである。之は物理学の内容として物理学的方法によって規定された対象であり、決して其の儘吾々が常識的に出逢う対象ではないからこそ、却って吾々は任意の常識概念の或る一面をとり出して常に之を物理学の対象とすることが出来る訳である。かくして同一の常識概念は例えば生物学の対象とも考えられると同時に又物理学の夫とも考えられる理由が出て来るのである。其の故は後者が構成された対象であり、又その意味に於て抽象の産物であり、一般的であるからに他ならない。物理学が何故自然科学の根柢となることが出来、又何故自然科学の理想的典型として王位に就けられるのを慣わしとするかは、之によって半ば必然的である**。第二の場合の――学問内容としての――対象概念は、物理学に於てその一つの実例を見出すと云うことが出来る。

* アリストテレス、Physica, 192 b 21―23 参照。