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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

いない。雑多な知覚や感覚が整理されてこそ初めて経験だったのだ。

だから、科学が経験の組織だと云ったが、その経験自身が、すでに整頓された組織物でしかない。処でこの経験に於ける組織関係そのものは、夫までの経験による組織であると同時に、即ち経験の所産であり結果であると同時に、今後の経験の指導的条件をなさねばならぬものである。即ち経験の想定であり予想(Antizipation=Voraussetzung)なのである。ここに経験に於ける超経験的乃至先経験的と呼ばれるモメントが潜んでいる。実は夫は超経験的でも先経験的でもないのであって、全く経験の内部のものにすぎないが、併し大切なのは、この経験が、自分自身を云わば自発的に又自律的に構成して行く組織=メカニズムを持っているということだ。経験の他にアプリオリか何かがあるのではない。知覚乃至感覚が発生する実際上の条件そのものが、この経験組織だったのである(形態心理学に於ける知覚のゲシタルトの理論を見よ)。――で経験のこうしたそれ自身に於ける組織性を用いて、之を目的意識的に展開したものが、経験の所謂組織としての科学に他ならなかった。