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かがくろん
科学論
戸坂 潤
「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页
今この観察が単に集団的な現象に就いてしか事実上不可能であるような場合(例えば気体運動論に於て全分子の運動の総体の如き)か、或いは個々現象の観察では必要な観察が行なわれない場合(例えば失業人口の推定の如き)、必要なのがこの統計的操作である。――かくて統計的操作は第一に大量観察だということが出来る。
尤も同じく大量観察と云っても、右の例の二つの場合によってその意味を異にしている。例えば前の例での一定容積内の分子の諸運動は、初めから大量そのものとしてしか事実上与えられ得ない。之は言葉から云えば言葉通り大量観察ではあるのだが、併し所謂(社会科学などで用いられる意味での)「大量観察」とは性質を全く異にしている。真の大量観察は、事象の個々の場合々々を、或る相当の回数乃至個数に至るまで、同時的に或いは時間的に、一つずつ反覆するに及んで、その平均分布を求め、そして初めて得られる処の観察を云うのである。
この後の意味に於ける大量観察の結果得られた材料を、普通「統計」と呼ぶのであるが、統計的操作は次に第二に、この統計材料を統計解析に掛ける。この統計材料が時間関係を含まない時(時系列をなさない時)は、統計解析は主に分布状態を与える。