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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

ただヘーゲルはその卓越した洞察にも拘らず、その思弁的な解釈哲学式の弁証法に信頼していたために、科学の弁証法的救済も、実証科学それ自身の下からの発達とは独立な、固定したプランに終って了ったのであった。実証科学は、それ自身の歴史的発達の途上に於てこそ、その機械的な悟性的な形式主義的立脚点の矛盾にも気付き、弁証法的な段階にまで意識的に洗練される必然性もあるのであったのに、ヘーゲルは全く非歴史的にも、之を天下り式の「体系」にまで化石化して了ったのであった。それ故ヘーゲル哲学、特にその自然哲学の前には、依然としてこの悟性的とけなされた自然科学が、その不器用な併し極めて有望な存在を続けていたばかりでなく、別に弁証法的段階にまで登ろうとする明らかな意識を持ち得たのではなかったにも拘らず、やがて急速にヘーゲルの「哲学」体系そのものを追い越して了ったのである。

そこからヘーゲル哲学の歴史的な悲劇が起ったばかりでなく、哲学一般(実はブルジョア哲学だが)への絶望と嘲笑の声とさえが揚がったのである。哲学と科学との関係に就いての今まで述べたような近代の様々な解釈の空しい努力も亦、ここに始まるのだった。