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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

ギリシアに於ける民族的史学はギリシア=ローマのポリュビオスに至って世界史の段階に昇るが、併し之が同時に歴史哲学の始めともなる。歴史哲学はヘブライ思想の系統を引いて(例えば聖アウグスティヌス)、やがて中世に於ける哲学一般(キリスト教哲学)の根柢をなすのだが、之へつながってその先駆となるものが、この史学乃至世界史であった。

史学乃至歴史科学と、歴史哲学乃至哲学一般との関係は、だから極めて密接である理由がある。そしてこの点は今日でも依然として重大な意義を持っている。近代の科学的な歴史学はその経験的な事実の考証に基くという実証的な建前から、或るものは意識的に哲学的な夾雑物を斥けようとするのであるが(「本来あった通り」を記述する――L・ランケ、又バックルやテーヌの場合)、それとても夫々一個の哲学的な立脚点を想定せざるを得ない。そして大切なことには、夫々の哲学的な立場の相違によって、歴史記述の方法と従ってその成果とが、銘々全く異っていたり相反していたりせざるを得ないことであり(各種の精神史観・心理史観・「第三史観」・そして唯物史観)、そればかりでなく、時代と共に変るこの記述方法自身の変遷が極めて著しいのである(ホメロス風の詩的記述・「春秋」