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かがくろん
科学論
戸坂 潤
「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页
(=特殊科学)だけを指すのではなくて、一般に学問のことを指すのである。処が学問という観念乃至言葉も亦決して元来、今日普通考えられているように限定されていたものではなかった。それは歴史の教える処である。例えばフランシス・ベーコンの有名な学問の分類法によれば、詩(乃至詩学)も亦学問の一つの分枝に数えられている。今日の言葉で言えば、文学乃至文芸も亦一つの学問だというのである。
併し今日所謂文学なるものが正常な意味に於ける学問だと考えられてはいない通り、「詩」も亦元来決して今日の意味での学問ではなかった。尤も文学という言葉を特に文芸(文学的芸術)から区別して、文献学・古典学・文学的言語学という意味に用いようという提案を採用するならば*、その意味での文学は立派に一つの学問であるのだが、併しそれにも拘らずなお文芸に、この文学という如何にも一つの学問であるかのような紛わしい呼び方が与えられていることは、単に日本や支那の文化的教養の特殊性によるばかりでなく(東洋にはギリシア的――近代的な自然科学と社会科学とが発達せず、その代りに文字による学・文献学が独占的な支配を有っていた)、一般にヨーロッパに於ても古く学問という概念が、広義に於ける芸術乃至技術(Ars ― Art ― Kunst)とどれ程未分な又は混淆した状態にあっ