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ほどよいひと

程よい人

豊島 与志雄

「女性線」1949(昭和24)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,328 字 · 21 页

青空文庫

そしてただ雑然としていてまとまりがなかった。それを打診するようなつもりで、私は同僚の一人に借金を申し込んだところ、容易く一万円貸してくれた。意外だった。私はなにか反撥的な気持で、期限のきた他の借金を返す時、その男の机に、謝礼の煙草包みをわざと人目につくほど公然と置いた。それを彼はこそこそと鞄にしまった。ざまあ見ろという思いで胸がすっとした。

そういう雰囲気を背景にして、京子が私に突っかかってきた。彼女は私を避けてる風だったし、私の方でも遠慮して遠のいていたが、突然、アパートに来てくれと言う。その約束の日曜の午後、私は肚を据えて出かけた。何か重大な相談があるらしく感ぜられるし、すべて彼女の意向に従う覚悟をしたのである。

彼女は珍らしく和服を着ていて、よそよそしい丁寧な態度で私を迎えた。私がいつも飲むことになっている通りに、紅茶とウイスキーとを出した。チーズと果物が添えてあった。気重い沈黙が続いた後に、彼女は言い出した。

「あなたはわたしに隠していらっしゃることがおありでしょう。それを、すっかり聞かして下さいませんか。」

「いったいどんなことなの。」と私はそら恍けた。