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くうちゅうふんぼ

空中墳墓

海野 十三

「新青年」博文館、1928(昭和3)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,986 字 · 28 页

青空文庫

相手は中々手強い。私の左腕はちぎれるように痛みを増した。急場だ、ヒラリと二度目に怪漢の腕をさけると、三度目には身を沈め、下から相手の脾腹を突き上げた。ウームと恐ろしい唸声がして私の目の前に大きな身体がドサリとぶったおれた。

やっと起き上って来た根賀地と運転手とが半ばきまりわる気に怪漢をグルグル捲きにしばった。

「先生お怪我は? してこいつは何奴でしょう」

「わからないな。ともあれ約束の時間が来る。運転手! お前はこいつを連れて事務所へかえれ。わしと根賀地とは公園を出たところでタキシを呼ぶから……。お客様は丁重に扱うんだぞ」

そう言いつけて車を返すと、私達二人は大急ぎで公園を駈けぬけて行った。

「先生、彼奴は昨日お話の松井田じゃありませんか」

「松井田にしちゃ年が若い。まだ二十五六の小僧だったぞ」

「エエ、そうですかい」

根賀地は走り乍ら苦わらいをしているらしかった。

「じゃ松井田の手先ですかい」

「何とも言えないね」

私達は運よくタキシーを捕えることが出来た。

「アッ。血が……。先生」

自動車の中で根賀地は私の左腕から迸る血潮に驚きの目を瞠った。

新宿へ出る迄に傷の手当を終り、衣服も一寸見ては血痕を発見しえないように整えることができた。