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くうちゅうふんぼ
空中墳墓
海野 十三
「新青年」博文館、1928(昭和3)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,986 字 · 28 页
「相良さん、これから覗いて下さい。これは一番倍率の低い望遠鏡で見た月の表面です」
相良十吉は、おそるおそる前へ出て、大望遠鏡の主体についた小さい副望遠鏡をのぞきこむのであった。
「では、こんどはこちらを……。少し倍率が大きくなりました。カルレムエ山脈が、少し大きく見えるでしょう。それは更にこちらの方を御覧になるともっと大きくなります。
それでは、いよいよメーンの望遠鏡です。カルレムエ山脈第一の高峰ウルムナリ山巓が見えるでしょう。こんなに大きく見える望遠鏡を持っているのはこの中央天文台だけです。有名なウィルスン天文台の一番大きい望遠鏡でもこの千分の一しか出ません」
相良十吉は望遠鏡に吸いついたようになっていた。月が隠れるまでにもうあと二分弱。
「こちらに把手があります。これをねじると、ピントが月の表面からだんだんと地球の方へ近よって来ます。隕石が飛んでいるのが見えるでしょう。これで二千キロメートルだけ近くなりました。この調子でかえて行きますよ。見えますか。さて、気をつけていて下さい。左下の部分に現われて来るものに……」
キャーッと魂切る悲鳴が起った。死人の胸のようなドームの壁体がユラユラと振動してウワンウワンウワンと奇怪な唸り音がそれに応じたようであった。