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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「呀ッ」

「おお!」人々は、呆然と、其の場に、立竦んだ。

そこへ現われた人物は、紛れもなく、別府司令官であった。

ところが、別府司令官は、直前まで、参謀長を、激しい語調で呶鳴っていた筈だった。おお、これはどうしたことだろう。参謀長の前には、たしかに、先刻から立っている別府司令官が居られるのだった。

二人の、別府司令官。

同じ服装の、同じ顔の、司令官。

どっちかが、贋者であろうと思われる。

二人の司令官の、相違した点は、湯河原中佐の案内した司令官は、軍帽の下から、頭部に捲いた、白い繃帯が、チラリと見えている点だった。

「両手を、おあげ願いたい」

中佐は、室内の司令官の背後に、軍用拳銃の銃口を、さしつけた。

「売国奴!」中佐の傍にいた将校が、イヤというほど中佐の横面を張り仆した。

室内の司令官は、サッと身を、壁際に移した。

「中佐を、保護せい。向う奴は、射殺してよしッ」参謀長は、若い参謀に、早口で命令した。

三人の将校と、二人の下士官とが、室内の司令官を、守った。

若い参謀たちは、勇敢に、彼等に、飛びかかっていった。咄嗟の場合とて、ピストルよりも、肉弾が物を言った。