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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
「電話局の交換手さんだからネ、交換手はお姉ちゃんに極っているのだよ」
「そのお姉ちゃんに僕、訊いてみたの。お姉ちゃんには、お母ちゃんと、そいからお父ちゃんもいるのッて尋ねたらネ……」
「うん」
「お父ちゃんも、お母ちゃんも居る筈なんだけれどネ、アメリカの飛行機が爆弾を落として、お家を焼いちゃったもんだからネ、どこへ行っちゃったか、判らないのッて云ってたよ。可哀想だねーェ」
「――オヤ、これは……。おう、プロペラの音が聞こえる」
「ああ、見える、見える。一つ、二つ、三つ……」
「方角は、真東。おや、こっちの方にも聞こえる。三ちゃん。船神磯の方には、何か見えないかい」
「船神磯の方? ああ、来たよ来たよ。飛行船が三つ――随分高く飛んでいるよ。おじいちゃん、電話を懸けていい!」
「そうじゃ、そうじゃ。間違うといけないから、落着いて掛けるのだよ」
櫓の上に、リリリリンと、可愛いい呼鈴の音がした。盲目の老人と、幼い子供の協力によって、警報は発せられた。真東から襲いかかるは、太平洋戦崩れの、爆撃隊であろう。北の方から、しずしずと下って来るのは、アラスカを通ってきた飛行船隊に違いない。