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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

夜に入ると、この聴音器だけが、飛行機の在処を云いあてた。

「J、O、A、K!」

神社の隣りに聳え立った、JOAKの空中線鉄塔のあたりから、アナウンサーの声が大きく響いた。

弾薬函の傍に跼っている兵士の群は、声のする鉄塔を見上げた。鉄塔を五メートルばかり登ったところに、真黒な函みたいなものがあるのが、薄明りのうちに認められたが、あれが、声の出てくる高声器なんだろうと思った。

本物の杉内アナウンサーは、鉄塔の向うに見える厳かなJOAKビルの中にいた。スタディオの、黄色い灯洩れる窓を通して、彼氏の短く苅りこんだ頭が見えていた。

「唯今から午後六時の子供さんのお時間でございますが……」

と云ったは云ったが、流石に老練なアナウンサーも、これから放送しようとする事項の重大性を考えて、そこでゴクリと唾を嚥みこんだ。

「……エエ、当放送局は、時局切迫のため、陸軍省令第五七〇九号によりましてこの時間から、東京警備司令部の手に移ることとなりました。随って既に発表しましたプログラムは、すべて中止となりましたので、あしからず御承知を願います。それでは唯今より、東京警備司令官別府大将の布告がございます」