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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

それは一つの大きい謎であった。司令部内で知っていたのは、司令官の別府大将と、その信頼すべき副官の湯河原中佐とだけであった。

この物々しい地下街の中心である警備司令室では、真中に青い羅紗のかかった大きい卓子が置かれ、広げられた亜細亜大地図を囲んで、司令官を始め幕僚の、緊張しきった顔が集っていた。

「すると、第一回の比律賓攻略は、結果失敗に終ったということになりますな」参謀肩章の金モール美しい将校が、声を呑んで唸った。

「うん、そうじゃ」司令官の別府大将は、頤髯をキュッと扱いて、目を閉じた。「第一師団は、マニラの北方二百キロのリンガイエン湾に敵前上陸し、三日目にはマニラを去る六十キロのバコロ附近まで進出したのじゃったが、そこで勝手の悪い雨中戦をやり、おまけに山一つ向うのオロンガボオ軍港からの四十糎の列車砲の集中砲火を喰って、その半数以上が一夜のうちにやられたということじゃ。何しろ強風雨のうちだから、空軍は手も足も出ず、さぞ無念じゃったろう」

「閣下。オロンガボオ要塞は、まだ占領出来ませんか」別の将校が訊いた。

「呉淞砲台のように、簡単にはゆかんようじゃ。海軍でも、早く陥落させて、太平洋に出なけりゃならんのじゃ、何しろ、連日のように最悪の気象に阻止せられて、頼みに思う空軍は全く役に立たず、そうかと云って、無理に進むと