轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
将軍は、胡麻塩の硬い髯を撫で撫で、目を瞑じて、諸報告に聞き惚れているかのようであった。
この場の将軍の様子を、遠くから窺っていたのは、高級副官の湯河原中佐だった。彼は何事かについて、しきりに焦慮している様でもあった。だが其の様子に気付いていたものは、唯の一人も無いと云ってよい。なぜならば、中佐を除いたこの室の全員は、刻々にせまる太平洋上の空中戦の結果はどうなるか、という問題に、注意力の全体を吸収せられていたからだった。
軈て、中佐は何事かを決心したものらしく、ソッと立つと、入口の扉を静かに押して、外に出た。
アスファルトの廊下には、人影がなかった。
中佐は、壁に背をつけた儘スルスルと、蟹の横匍いのように壁際を滑っていった。そして軈て中佐がピタリと止ったのは、「司令官室」と黒い札の上に白エナメルで書かれた室だった。
奇怪な湯河原中佐は、扉の鍵穴に、なにものかを挿し入れてガチャガチャやっていたが、やっと扉が開いた。
ものの五分と時間は懸らなかった。司令官室で何をやったのであるかは判らぬけれど、再び中佐が姿をあらわしたときには、非常な決心をしているらしく、顔面神経がピクピク動いているのが、廊下灯によって写し出されたほどであった。