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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

たちまち室内は一面の火の海となり、なおも隣家の方へ燃えひろがっていった。

まったく手の下しようもない。みるみる火勢はものすごさを加えていって、往来へとびだしてみると、もう屋根の上へ真赤な炎が、メラメラと顔をだしていた。早く逃げなければならないが、この強い火の海にとりまかれてはどちらへ逃げてよいかわからない。まったく気のつきようが遅かった。三十秒以内に、落ちた焼夷弾のまわりの畳や襖や蒲団などの燃えやすい家具に、ドンドン水をかけてビショビショに濡らせばよかった。すると焼夷弾がクラクラに燃えさかり、はげしい火の子を吹きだそうと、その火の子の落ちたところが濡れていれば、あたりに燃えひろがる心配はなかったのだ。

焼夷弾の防ぎ方をハッキリ心得ている人が少かったばかりに、焼夷弾を全町にくらった直江津の町には、敵機の注文どおりに一時にドッと火の手があがった。

行方をくらました一機が直江津の上空にしのびこんだので、スパイは三箇所に火事を起して、直江津の町がここだと敵機に知らせたわけだった。だから焼夷弾は、町の上にちゃんと正しく落ちた。

「姉さん、逃げましょう――」

旗男は火が迫ったのを見て、姉をうながした。