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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

大和魂は現役軍人だけの持ものじゃない。われわれにだってありまさあ」

「われわれにも、チャンとありますかなァ。わたしなんかにゃ、どうも大和魂の持合せが少いんで恥ずかしいんですよ……」

といって頭をかいたが、

「どうです、親方。この汽車は今夜中このとおり、鎧戸をおろし、まっくらにして走るんですかね」

「いや、いまに非常管制がとけて、警戒管制にかえれば、窓もあけられますよ」

「警戒管制になるのはいつでしょうな」

「いまに車掌さんが知らせに来ますよ。それまでは、すこし蒸暑いが、我慢しましょうや」

「我慢しますが、わしはどうも暑いのには……いやどうも弱い日本人だ。……どうです、親方。暑さしのぎに、暗いけれど一つ将棋を一番、やりませんか」

「えッ、将棋!」

親方は太い眉をビクンと動かした。

「この空襲警報の中で将棋ですか。いやおどろいた。あんたも弱い日本人じゃない。おそれいったる度胸。これァ面白い。さしあたり用もないから、じゃ生死の境に一番さしましょうか。これァ面白い。はッはッはッ」

辻村商人氏が、トランクから小さい将棋盤を出してきた。トランクを向かいあった二人の膝の上に渡し、その上に盤をおいた。