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くうしゅうけいほう
空襲警報
海野 十三
「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页
「……アノ奥さま。いま変な男が、井戸のところをウロウロしているのでございますよ。……故紙業のような男で……」
「アラそう?」
「いえ奥さま。それが変なんでございますよ。ジロジロと井戸の方を睨んでいるのでございますよ。……ああ、わかりましたわ。あのひと、井戸の中の西瓜を狙っているのでございますわ。西瓜泥棒……」
「これ、静かにおし……」
西瓜泥棒と聞いて、旗男はソッと硝子戸のすきまから外を覗いてみた。なるほど、いるいる。暗いのでよくは分からないが、頬被をした上に帽子をかぶり、背中にはバナナの空籠を背負っている男が、ソロソロ井戸端に近づいてゆく。……
――怪しからん奴だ。……しかし、西瓜ならもう家の中に取りこんであるからお生憎さまだ。ハハンのフフンだ。――
と、旗男はなおも眼をはなさないでいると、かの男は、見られているとも知らず、井戸の上に身体をもたせかけると、右手をつとのばして何か井戸の中へ投げいれた様子、カチンと硝子が割れるような音が聞えた。一体何を入れたんだろう?
と、とたんにあらあらしく玄関の格子戸が開いて、
「コラ待て……」
と、飛びだしていったのは国彦中尉。