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くうしゅうけいほう
空襲警報
海野 十三
「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页
お前たちは穴のあいた靴を履いて、往来を歩いている。そこへ敵の飛行機が糜爛性の毒瓦斯イペリットを落した。さあ漂白粉をバケツに入れてその上に撒かないと、沢山の市民が中毒する。さあ行け、といわれたとき、穴のあいたゴム靴を履いていて、それでイペリットの上を歩けるかね――」
鍛冶屋軍曹の言葉は、火のようにあつかった。
「それは歩けないだろう。靴の穴が直っていなけりゃ、消毒に行けないし、無理に行こうものなら、穴からイペリットが染みこんで、足の裏が火ぶくれになる。ひどければ、そこから身体が腐り出して死んじまう。そうなるのも、元は何から起ったことだといえば、非常管制のとき靴屋の仕事を休んだためだ。どうだわかったろう。――灯火管制で、外から灯を見えなくすることは防衛上もちろん必要なことだ。だがサァ空襲だ、ソレ電灯のスイッチをひねって真暗にしてしまえ……では感心できない。外からちっとも見えなくすると同時に、家の中で仕事が出来るようにして置くのが、もっともゆきとどいた灯火管制のやり方だ。そういう人は非国民どころか、甲の上の模範国民だ、そうだろうが……」
非国民と悪口をいった靴屋のおじさんが、模範国民だと聞かされて、少年たちは眼をパチクリ。