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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

――防衛司令部の中はまるで鉄工場のように活発になった。

暁の夢を破られた市民は、ドッと外にとびだした。サイレンがブーッ、ブーッと息をつくように鳴っている。夜霧でびっしょり濡れた朝の街路の上を拡声器から出るラジオの音がガンガンと響いてゆく。

「……空襲警報……空襲警報が発せられました。敵機は約二時間以内に帝都上空に現れるものと見られます。あッ……、ただ今、防衛司令官から諭告が発せられる模様であります。……香取閣下を御紹介いたします」

それにつづいて、香取将軍の重々しい声が響いてきた。

「私は香取中将であります。先程の発表にありましたるごとく、有力なるS国爆撃機隊は太平洋上より刻一刻、帝国本土に接近しつつあります。本官は既に防衛諸部隊に命じ、虐非道の敵隊の撃滅を期しております。さりながら悪運のつよき敵機の一部が、本土内に潜入するやも計りがたく、ここに於て忠勇なる国民諸君の、一大奮起をお願いする次第であります。沈勇と忍耐と協力とにより、完全なる防護を尽くされんことを希望してやみません。おわり」

このラジオを聞いた東京市民は、ただちに立って、大日本帝国万歳を絶叫した。