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とってい

突堤

宮本 百合子

「中央公論」1935(昭和10)年10月「中央公論」五十周年記念特大号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,221 字 · 15 页

青空文庫

「なんだべ……鯰でねえかしふア」

と云ったので、私や弟たちは宿について初めて、ランプの灯の揺れるほど笑いこけた。

夜があけてみると、同じ曇りながらも夜のうちに雨があがって翁島の方も見晴らせ、涼しい朝風が吹いている。私と弟たちとは、雨のために表面だけ薄くかたまったような湖畔の砂の上を歩いて行った。時々ふりかえって手を振った。宿の二階の窓から、おばあさんが顔を出してこっちを眺めているのであった。

その辺は、湖のまわりに農家がまばらに在るきりで、樹のふっさりとした茂みの下に小舟が引上げられているのを見つけ近づいて見ると、底が朽ちていて、胴の間を抜いて砂地からの雑草が生えている。湖のそばだというばかりのさびれた在所なのであった。

私共は何か湖へ来たらしい面白さの種をさがすような気持で、その辺を所在なくぶらついた揚句、湖へ掘割の水が流れ入る堰の上へ出て行って見た。そこからは湖心へ向って五六間の細長い石畳みの堤が突き出ている。

私はぶらぶらとその突ぱなのところまで行ってみた。そして湖に向って腰をおろし、足をひろげるようにして下を覗くと、底まで蒼々と透きとおった水の中に三四寸の小魚が群をなして泳いでいるのがはっきり見えた。