轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ぬすむおんな
窃む女
黒島 伝治
1923(大正12)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,734 字 · 18 页
が今では、そんなものは、何も役に立たないことを知っていた。正直や清廉では現在食って行くことも出来ないのを強く感じていた。けれでも彼は妻に不正をすゝめる気持にはなれなかった。
四
お里が家から出て行ったあとで、清吉は、眼をつむって妻の心持を想像してみた。彼には、お里が子供のように思われた。久しく同棲しているうちに、彼は、妻の感覚や感情の動き方が、隅々まで分るような気がした。
妻が見せた二反は、彼は一寸見たきりだったが、如何にも子供がほしがりそうなものだった。彼女は、頻りに地質もよさそうだと、枕頭で呟いたりしていた。子供がほしいものはまた彼女のほしいものだった。
頭のもが/\は、濃くなって、ぼんやりして来るかと思うと、また雲が散るように晴れて透き通って来たりした。彼はとりとめもないことを、想像していた。想像は、一とたび浮び上って来ると、彼をぐい/\引きつけて行った。それは、彼の意志でどうすることも出来なかった。彼はただ従僕のように、想像のあとについて、引きずりまわされた。
想像は、いつのまにか、彼を丸文字屋の店へ引っぱって行っていた。丸文字屋へは、金持ちの客が沢山行っている。