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まどにさすかげ

窓にさす影

豊島 与志雄

「小説公園」1952(昭和27)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,068 字 · 26 页

青空文庫

「そう、それがいいでしょう。」

私は急に淋しい悲しい思いがし、一方では、叔母さんがたいへん頼りになる気がした。それで、女中が茶菓を運んできた後も、そこに居残っていた。けれど、何も話すことがなかった。思い切って、祖母の約束の笑顔のことを打ち明けてみた。のっぺらぽうの顔の話はすっかり陰に伏せて、ただ、亡くなっても笑顔を見せてあげると祖母が言ったことを、何気ない話題みたいに持ち出して、それがなかなか本当にならないと訴えた。

叔母さんは注意深く聞いていたが、暫くたって言った。

「それは違います。」

改まった調子できっぱり言われて、私は少しびっくりした。

「それは違います。」

叔母はまた繰り返した。それから、普通の調子に戻って、私に説明してきかせた。――遠くに住んでる人だの、逢いたがってる人だのに、死んだ人が何かの合図で自分の死亡を知らせるという話は、世間にいくらもある。例えば、自分の姿をはっきりとその人の前に現わすというような話は、しばしば聞く。それが真実だか錯覚だかは別問題として、そういう場合、必ず、死んだ人の気が、一念といったようなものが、そこに籠ってるに違いない。