轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まどにさすかげ
窓にさす影
豊島 与志雄
「小説公園」1952(昭和27)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,068 字 · 26 页
ところが、祖母の場合は、何の気も、何の一念も、全くなかった。
「それどころか、美佐子さん有難うと、ただ安らかな気持ちでいらしたんですよ。」
「そりゃあ、お祖母さまはいつも仰言ったわ。何かちょっとしてあげると、すぐ有難うと……。」
「それとは別のことですよ。あなたが足をさすってあげたり、果物の汁を匙で口に入れてあげたり、頬の乱れ毛をかき上げてあげたり、いろんなことをする度に、有難うと仰言ったかも知れないが、そんなことではありません。なんと言ったらいいか……全体の気持ちね。寝つかれてから亡くなられるまで、ずっと通して、そしてほっとしたように、美佐子さん有難う、よくしてくれましたと、感謝と安堵の気持ちね。だからそこには、何の気も籠っていないし、何の一念も籠っていないでしょう。」
私は涙ぐんで、頷いた。
「それだから、あなたの前に笑顔を現わして見せるなんて、亡くなられた後でわざわざそんなことをなさるわけは、少しもありません。そんなことを仰言ったとしても、それはただ、有難うと仰言るのと同じ気持ちからだったでしょう。」
私は返事に迷った。分るようでもあり、分らないようでもあった。