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たてふだ
立札
豊島 与志雄
――近代伝説――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,218 字 · 21 页
一隻の船には、酒甕や綿布類や鑵詰類や若干の金銭が積まれていました。
それらの荷船が、空になって戻って来ます頃には、夜はもう明け放れて、町人たちは河岸に駆け出し、漕ぎ手の苦力たちを歓呼して迎えました。
匪賊たちが進路を対岸へ取ったのも、討伐隊の待伏せを恐れた故もありましょうが、朱文の意見に従ったからだという説もあります。
斯くして、町は僅かな被害だけで難を免れました。
ただ、茲に特記しておきたい一事は、張家の倉庫の前に、二名の武装匪賊の死体が横たわっていたことであります。鋭利な刃物で顔面や胸部を抉られて、血に染んで倒れていました。そしてその銃と弾薬だけは誰かに奪われて、どこにも見出されませんでした。死体はすぐさま、ひそかに町外れの野原に埋められてしまいましたが、そのことがいつしか町人たちの間に拡まって、奇怪な印象を与えることになりました。
それはとにかく、町にとっての大事件は、朱文を遙か高いところへ持上げ、彼に英雄めいた風格を与えることとなりました。彼の姿を探し求める眼差が、町の至る所に光っていました。
朱文はそれを避けてか、青布の苦力たちをねぎらってから、張家の小房に閉じ籠っていましたが、その日の夜、ひそかに外出の仕度をしたところを、張一滄につかまりました。