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たちがれ

立枯れ

豊島 与志雄

「改造」1933(昭和8)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,613 字 · 41 页

青空文庫

それは、西田に対する同情からでもなく、ましてイデオロギー的根拠があるものでもなく、彼がいつも被圧迫階級に対して漠然と感ずる同感の念に似たものであって、それだけに広く大きく、盲目的なものだった。彼は一挙に柴田の饒舌を遮った。

「とにかく、あの会社は、もう伯父のものではありませんし、まして、僕には何の関係もないのです。第一、工場のことなんか、僕には全く別な世界です。」

と、そこまではよかったが、中江はなお続けて、職工たちの運動に何の援助も助言も出来ない理由として、愚かにも、自分の貧窮をさらけ出してしまったのである。家は借家、電話は五百円の借金の担保にはいってる、知人から三千円ばかりの借金がある、其他、方々への支払の停滞が千円ばかり、なおさし当り、高利貸の厄介になろうかと考えていることなど、手当り次第にぶちまけてしまったのである。柴田は一寸面喰った形で、口を噤んでいたが、やがて、冷静とも冷淡ともつかない調子で云うのだった。

「いや、別に、御援助を仰ぎに伺ったわけではありませんから……。」そして彼はじっと中江の顔色を窺った。「然し、西田のような男と交際なさるのは、お為になりませんですよ。