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たちがれ

立枯れ

豊島 与志雄

「改造」1933(昭和8)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,613 字 · 41 页

青空文庫

そしてそれを不思議に思ってるうちに、問題がみつかった。

「君は、どうして僕の家に来るのを嫌がるんですか。」と中江はだしぬけに云った。

島村と静葉とのことが頭に浮んだのだった。ああいうこだわりのないしっくりした朗かな仲とは、まるで遠いところに自分たちはあるようだった。

「まあ先生は……。」キミ子は、意外にも、挑戦的な様子を示した。「先生は……あたしと、結婚なさるおつもりなの。そんなこと……。」

彼女の頬に赤みがさしたのを、中江は珍らしく美しいと思った。それが、彼の顔に、微妙なまた厚がましい笑みを上せた。彼女の魂を裳でぎゅっと握りしめるようなものだった。軽い笑みが、にやにやしたねばっこいものになっていった……。

「…………」

キミ子は言葉を喉につまらして、中江の首にとびついてきたが、唇を合せることなく、何かひやりとしたように身を引いて、じっと中江の眼の中を覗きこんだ。もう中江の眼は、冷かな鋭いものを含んでいた。

「こないだの、あの使のひとは……。」

こないだではない。それは一昨日のことだった。

「そう、おとついの、あの声のきれいなひと……。」

「志水英子さん……。