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わらわないむすめ

笑わない娘

小川 未明

「婦人之友」1921(大正10)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,738 字 · 8 页

青空文庫

あるところに、なに不足なく育てられた少女がありました。ただ一人ぎりで、両親にはほかに子供もありませんでしたから、娘は生まれると大事に育てられたのであります。

世間にも知られるほどの金持ちでありましたから、娘はりっぱな家に住み、食べ物から着る物まで、ほかの子供らには、とうていそのまねのできないほど、しあわせに日を送ることができたのであります。

娘は大きくなると、それは美しゅうございました。目はぱっちりとして、髪の毛は黒く長く、色は白くて、この近隣に、これほど美しい娘はないといわれるほどでありましたから、両親の喜びは、たとえようがなかったのであります。

けれど、ここに一つ両親の心を傷めることがありました。それは、こんなに美しい娘が、いつも黙って、沈んでいて、うれしそうな顔をして笑ったことがなかった。

「なぜ、あの子は笑わないだろう。」

「まんざらものをいわないこともないから、おしではないが、いったいどうした子だろう。」

両親は、顔を見合わせて、うすうす我が子の身の上について心配しました。

なにしろ、金はいくらもありますから、金でどうにかなることなら、なんでも買ってやって、娘の快活にものをいい、楽しむ有り様をば見たいものだと思いました。