轻松读懂日语经典作品
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ふでにもくちにもつくす
筆にも口にもつくす
北大路 魯山人
「独歩」1953(昭和28)年
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,348 字 · 5 页
そのひとはすぐに、それが母親からのものだと、分ったそうだよ」
「先生、やはり、その母親からとどけられる弁当には親切があるからですね」
「そうだ、そうだ、誰の弁当にもまさる真心がそのひとに通じたのだな」
「分りました。先生、ではいちばん親切な料理は、母親や女房の作ったものということになりますわね」
「そうだとも、そうだとも」
「では、先生、伺いますが、恋女房がそれこそ真心をつくしてこしらえてくれた料理がぜったい世の中でいちばんおいしいはずなのに、よそで食べる料理のほうが、はるかにおいしい場合があると思いますが、いえ、たいていの場合、家庭料理より、料理屋の料理のほうがおいしいことが多いのですが、これはどうしてでしょうか、先生」
「うむ、君はいいところを突いてくるね。わたしは、親切心、真心がいちばん大事だといったが、それがいちばんおいしいとはいわなかったはずだ」
「うまくお逃げになりましたね、先生」
「逃げはせんよ、なにも君と鬼ごっこをしているわけじゃない……」
「じゃ、先生、説明をしてくださいますわね」
「いいとも……真心が第一だが、真心だけではいかん。真心はたいせつだが、真心さえあれば、なんでもとおるというのなら、世の中は甘いもんだ。